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10家族に断られたHIVの赤ちゃん、男性カップルが養子に引き取る。すると家族の元に奇跡が舞い降りた
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  • 2019.11.05
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10家族に断られたHIVの赤ちゃん、男性カップルが養子に引き取る。すると家族の元に奇跡が舞い降りた

文:岩見旦

HIVの赤ちゃんと同性カップルの絆

ダミアン・ピジンさん(42歳)とアリエル・ビジャラさん(39歳)は、アルゼンチン北東部のサンタフェ州で結婚した初めての同性カップルだ。2人は、子どものための養子縁組の支援をしている非政府組織「Acunar Familias」で働いている。

2011年に新しい家族を迎え入れることにしたピジンさんとビジャラさん。しかし、その後長い間、2人の元に養子縁組の連絡が来ることがなく、2人はとても落ち込んでいた。

約3年間の2014年、ついに養子縁組の準備が出来たと電話が来た。その子は生後28日の低体重の女の子で、生まれ持ってHIVを患っていた。10世帯の家族に断られ続けていたという。

しかし、ピジンさんとビジャラさんはこの女の子を受け入れることに戸惑いはなかった。ビジャラさんは地元メディアの取材に「この子を見た瞬間、彼女が私の人生の一部であると感じました。すぐに特別な心のつながりが出来ました。私たちは彼女を両腕に抱えて哺乳瓶で食事を与えると、泣かずに目を大きく見開いて私を見ました」と語った。

HIVが検知不可能なレベルまで低下

女の子はオリビアと名付けられ、HIVの治療がスタートした。すると家族の元に奇跡が舞い降りた。治療が非常に上手く作用したのだ。オリビアは健康を取り戻し、みるみる体重を増やした。数年後には、オリビアの身体の中でHIVが検出不可能なレベルまで低下。エイズを発症する心配がなくなり、周りに感染させるリスクがほとんどなくなったのだ。ついにオリビアは普通の生活を手に入れた。

オリビアを家族に迎え入れて1年後の2015年、ピジンさんとビジャラさんは新たに女の子の養子を引き受けた。名前はヴィクトリア。オリビアは先月誕生日を迎え、ヴィクトリアも2月に同い年になる。

HIV感染症が進行し、免疫が著しく低下するエイズは、かつて死に直結すると恐れられ、合併症により命を落とすことが多かった。しかし、現在は医学の進歩により、早期診断や治療により発症が防げるようになった。しかし未だに差別が残っており、就職や人間関係で悩みを抱える人が多いという。オリビアもHIVでなければ、10世帯もの家族に断れることもなかっただろう。

自らを受け入れてもらえる温かい家族に出会えたオリビア。これから4人仲良く、幸せな日々を過ごしてほしい。


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