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世界初の男性器の完全移植手術が無事成功。1年半経過後、排尿機能と生殖機能が見事に回復
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  • 2019.11.15
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世界初の男性器の完全移植手術が無事成功。1年半経過後、排尿機能と生殖機能が見事に回復

Photo By Shutterstock

文:岩見旦

日々の医学の進歩には驚かされるばかりだが、アメリカで衝撃的な移植手術が成功したというニュースが報じられ、注目を集めている。

世界初の大手術から1年半経過

米国ボルティモアのジョンズ・ポプキンズ大学医学部は2018年3月、世界初となるペニスのすべてと陰嚢の移植手術を行った。手術から1年半程経った先週、同学部の医師は『The New England Journal of Medicine』にて、手術は成功したと報告した。

同学部の形成外科の教授であるリック・レディット博士は「彼は非常にうまくいっている」と明かし、「移植は順調に行われました。拒絶反応はそれほど大きくなく、非常にうまく機能を復活させている」と述べた。立った状態で放尿したり、勃起したり、オルガズムを感じたり出来るようになり、排尿機能や生殖機能がほぼ正常に戻ったという。

レディット博士は『NBC News』の取材に「これほど長い間、正常を感じられるのは初めてです」と答えた。

爆弾で下半身を失った元米軍兵士

この世界初となる移植手術を受けたのは元米軍兵士。2010年にアフガニスタンで爆弾を踏み、両足と共に男性器を失った。『MIT Technology Review』によると、この元米軍兵士は「レイ」という仮名で呼ばれている。レイは両足を失っても特に気にならず、すぐに義足で歩くことを学び、ショートパンツで外出もしていた。しかし、男性器を失ったことは、家族以外には打ち明けられなかったとのこと。

現在30代であるレイは、人工のペニスを作るため身体の他の部分の皮膚を移植し、性交の前にペニスをポンプで膨らませる陰茎形成術を受ける選択肢もあった。しかし、ジョンズ・ポプキンズ大学医学部の医師たちは、死亡したドナーから男性器を移植するという大胆な方法を提案した。

レイは最終的にこの大掛かりな移植手術を選択。ペニスの移植手術は過去に4例あるが、ペニスのすべてと陰嚢の移植手術は世界初となる。手術には約30人の医療専門家が参加し、14時間掛かったという。

この手術は画期的であったが、医師たちは倫理的な問題を突きつけられた。ドナーの精巣が移植された場合、レイがドナーの遺伝子を持つ子どもの父親になる可能性がある。生命倫理に関する学者と相談した結果、精巣の移植はしないことに決めた。

男性器の移植手術を受けたレイは「私がこれまでに行った最良の決断の一つ」と語り、生活の質が大幅に向上し、外出して新たな出会いに自信が持てるようになったと明かした。

事故などで身体の一部を失った方やセクシャルマイノリティの方にとって、大きな期待につながる話題だ。


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