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ドラゴンボールで理解する、経済再開のために必要なコロナ対策【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(3)
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  • 2020.05.12
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ドラゴンボールで理解する、経済再開のために必要なコロナ対策【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(3)

5月1日に出た専門家会議の資料「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」より

あたらしいせーかつよーしきってか!? 現場の状況も知らずにムチャなことばっか言って…
そりゃ大企業で働いてて雇用も安定しててテレワークも全然できる職種ならいいけどさ
感染症専門家に限らず今のエリートさんたちの議論は、上滑りで、生身の人間一人一人が生きて死ぬってことの勘案ができてるのか、超不安だわ。

私は経営コンサルタントの仕事以外に、「文通」を通じて個人の人生に対するコーチング的な仕事もしてるんですが、そのクライアントには老若男女、地方に住んでる人も都会に住んでいる人も外国に住んでいる人もいます。

その中で上記のコメントは、地方政界で頑張るお姉さん(落選中)から最近来たメールの抜粋なんですけど、政府不信というか、当局不信というか、一部で相当高まっているんだな、ということを感じさせられました。

日本の専門家会議の人たちは国際的にも評価が高い凄い人たちだし、お陰様で欧米に比べてかなり低い死者数に抑え込めているわけですけど、彼らは一般国民とのコミュニケーションが確かに凄く苦手で、記者会見を見ていても「こりゃ伝わらないよなあ」ってことが頻繁にあるのがもったいないところですね。

結果としてうまくコミュニケーションが取れないままになし崩しに緊急事態宣言が「一ヶ月程度」延長されることが決まり、終わりの見えない自粛生活に不安の声が高まっているのを感じます。

だからとにかく経済再開を目指したい、それは今突然の苦境に叩き込まれている業界の人たちを中心とした切実な声だと言えます。

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元小学校教員がはじめた塾がキャンセル待ちが続出する大盛況となるなど、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。アマゾンKDPより「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」、星海社新書より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』発売中。

1:最大の課題は、自分たちの対処方針が全然共有できていないこと

現状の最大の問題は、専門家会議を中心とする日本の当局も、その経済再開を目指したビジョンを一応は持っていると思われるにも関わらず、あまりにも国民一般とのコミュニケーションが壊滅的に取れていないので、相互不信から不安ばかりが募ってしまっていることです。

今国が何を考えてどっちに進んでいるか不安だから、自分自身で情報を取りに行こうとして変な陰謀論にハマってしまったり、イライラして攻撃的になってしまい、一部の感染者に対するバッシングにつながってしまったりする。

日本の10倍とかいうレベルで人が死んでいる欧米のリーダーが逆にやたらSNSで称賛されたりする流れがあるのも、その「自分たちがやっていること」を明確に情報共有してくれる存在が今の日本にいないことの不満の裏返しなのではないかと思います。

読者のあなたも不安でしょうか?

そういうあなたに、情報を整理して現状を共有し、これからどういうことをやっていけばいいのか?を整理するのはコンサルタントの仕事の基本なので、この記事では日本の専門家会議の方針の整理と、今どうなっていて、今後自分たちがどういうことを考えていけばいいのか?についてまとめる記事を書きます。

そして記事後半では、「経済再開派」と「あくまで慎重派」との間のコミュニケーションを整理し、どうすれば「最適なタイミングで最適な経済再開ができるのか」について、私たちが今考えるべきことを述べます(人によっては前半は “わかってるよそんなこと”的な話になるかもしれないので、詳しい方は飛ばし読んで後半へお進みください)。

2:まずは基本的な考え方「ハンマーアンドダンス戦略」について知ろう

緊急事態宣言が先月出されてから、「文通」の仕事で日本全国の老若男女のいろんな人と関わっていて危ないなあと感じていたことは、その文通してる本人はともかく、その周囲にいる家族や同僚さんたちの間では、「ゴールデンウィークが終わった頃には嘘みたいに問題が消えてなくなっているんだろうから、1カ月だけ頑張ろう」と思っている人が多かったことです。

ナチスの強制収容所に収容された経験のある精神科医ヴィクトール・フランクルが書いた有名な『夜と霧』という本に、「クリスマスが来たらきっと良くなるだろう」とかそういう希望にすがっていた人たちはクリスマスが来ても解放されなくて絶望して多く亡くなったという話が出てきます。

根拠のない「●●になったらよくなるはず」にすがるのではなくて、長期的な見通しを持って持久走を走るつもりになることが大事ですよね。『夜と霧』でも最終的には希望を捨てないことが生き延びるためにとても重要だったということが書かれています。

そのための基本的な考え方が、「ハンマーアンドダンス」戦略です(いまさらそんな基本の話からはじめるの…?と思う人もいるかもしれませんがまず基本を共有しないことには)。

制御不能レベルまで増えすぎた感染者数を、「まずはハンマーでぶっ叩く」ことが必要な段階…それがここ1カ月ぐらい続けてきた日本の緊急事態宣言や欧米のロックダウンです。

5月1日に出た専門家会議の資料「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」から図を引用しますと、

上図の「徹底した行動変容の要請で新規感染者数を劇的に抑え込む」と書かれているところが「ハンマー」です。

日本においては緊急事態宣言を出して、全国に「自粛を要請」したことで、諸外国のような法律的な強制力や罰金などの制度なしに、かなりの効果をあげることができました。そのことは「俺ら頑張ったじゃん!」的に自分たちを褒めてあげていいところでしょう。

ここで重要なことは、過激に経済を止める方策に出て「ハンマー」で新規感染者数を減らしたのは、「ボクメツ」するためではありません。そうではなくて、「コントロール可能な数」に減らすことで、そこからは「経済を回しながら対処できるようにする」狙いがあったんですね。

それが「ダンスwithコロナ」の時代がやってくる…という話になります。

同じ資料からの引用ですが、全国でも東京でも新規感染者数は大きく下がってきています。

じゃあさっさと経済再開させろ!!!(つまり “ハンマー”を終えて “ダンスwithコロナ”をスタートさせろ)…という声が高まってきているわけですが、結局「あと1カ月程度」は延長せざるを得ないという決断を、日本の専門家会議は下すことになりました。

ここに「経済再開派と慎重派の間の意見が分かれるポイント」があるわけです。

(次ページ)3:状況把握のために、クリリンとヤジロベーをイメージしよう

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