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日本人に足りない「自分で考える力」を育むオランダ式教育。オンラインスクール「Serrendip」の挑戦【連載】オランダ発スロージャーナリズム(30)
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  • 2020.12.01
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日本人に足りない「自分で考える力」を育むオランダ式教育。オンラインスクール「Serrendip」の挑戦【連載】オランダ発スロージャーナリズム(30)

友達と庭でランチを食べている次男。コロナ禍でも子どもの生活は、一時のロックダウン後はギリギリ通常どおり

まだまだ収まる気配のない新型コロナ。日本もだいぶ増えてきましたね。もっとも欧州では、完全に第二波が来ており、日本がいくら増えてきたと言っても、数としては欧州のそれとは比べ物になりません。こちらから見ると、まだまだだいぶ少ない感じはします。

こんなコロナ禍の中ですが、実は新しいサービスを始めました。Serrendip(セレンディップ)という「オランダ式の教えないオンラインスポーツ&アートスクール」です。実はこちら、事務局の当初の予想を大幅に上回る子どもたちの成長が見られています。ここから、子育てのヒントのようなものが見つかったので、今回はそれについて書いてみようと思います。

子育てに関心のあるパパさん、ママさん、ぜひご注目ください。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

オランダ式「教えない」教育がなぜ成り立つか

現在、オランダに住んで5年目の筆者ですが、そもそもオランダに移住したのは子どもの教育環境を考えてのことでした。「教育とは未来を作ること」と捉えている筆者にとって、オランダの教育はまさに「未来を作るもの」と思えたのです。

実際に5年住んで子育てをしてみて、良かった点もあれば、悪かった点、当然両方あります。

良かった点は「自分で物事を考えることができる」ようになったこと。悪かった点は、「全体的に緩い」ところ。その他にも、オランダにいることで、日本語の学習が遅れている、日本の常識的なことがまったく身についていない、などなど挙げればキリがありません。

ただ、今のところは総合的には良かったかな、と感じています。上記の良い点と悪い点は、表裏一体的なところもあります。日本と比べると、オランダは子育て、教育関係は全体的に緩いので、それにより心の余裕を持つことができ、その余裕が「自分で考える」ことを可能にしているようにも感じます。好きなことに自分のペースで没頭できる、ということかもしれません。

この辺、実は日本のかつての「ゆとり教育」が目指したところかもしれません。これ、じっくりと腰を据えて、ゆっくりと子どもの成長を見守る必要がありますが、オランダは国として、余裕を持って、あるいはまったく慌てずに、これに付き合うという風土があるように思います。

こういうことを日本のお子さんにも体験してもらいたくて、始めたのがこのセレンディップでもあります。

もう一点、現在の日本では、子どもが成長過程で親と先生以外の大人と接する機会が減っているということにも危機感を持っています。というのは、子どもの成長過程において、大人との「偶然の出会い」が、その子の人生において意外にも大切なものになったという経験、ほとんどの人にあるのではないでしょうか? 今はその機会が減っています。なので「素敵な偶然に出会う」という意味の英語「セレンディピティ(Serendipity)」の語源の童話タイトルから取った、セレンディップという名前には、コーチとの出会い自体が、成長のきっかけの一つになればいいなあという思いを込めています。そもそもオンラインを使うことで、オランダと日本全国が簡単に繋がってしまうのですから。

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