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「見える復興」は進んだけれど、「見えない復興」はまだまだ進んでいないー福島在住の臨床心理士に訊く「心の復興」【特集】3.11 あれから10年
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  • 2021.03.11
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「見える復興」は進んだけれど、「見えない復興」はまだまだ進んでいないー福島在住の臨床心理士に訊く「心の復興」【特集】3.11 あれから10年

福島弁で「わりぃない」=すみませんとまず言ってしまう

ーー それはもしかすると、東北の方のメンタリティみたいなものにも関係しているのかもしれないですね。

後藤:それもあるかもしれないですね。

ーー 我慢強いというか。

後藤:贈り物をした時に言われる福島弁に「わりぃない」という言葉があります。「私なんかのために余計な気を遣わせてしまって、なんだかかえってご迷惑をおかけしてすみません」みたいな、へりくだったり申し訳なさを最初に言う。「なんだってハァ、わりぃない」っていう言い方をする。「ハァ」は感嘆詞。自分のおじいちゃんぐらいの世代の人は、ありがとうを最初に言わないことが多いんです。

ーー 「すみません」っていうのが最初に出ちゃうっていうのは日本人全員もそうかもしれない。アメリカ人が最初に「Sorry」とは言わないですからね。

後藤:もちろん、その後に「ありがとない」って言って、りんごをあげただけなのに白菜が5個も6個も返ってくるみたいな田舎ならではのコミュニケーションがあるんですが、普段からそういうコミュニケーションだから、「困ってるんです」とか、「今、助けが必要なんです」っていう、自分の心の扉を内側から開けて言葉にして誰かに何かを伝えるとかって、もしかしたら日本の中でも苦手な地域なのかもしれないですね。

震災の後に、BRAHMANというロックバンドが来てくれてライブをやったんです。その時にステージで、「福島の人さ、みんなさ、我慢強くてさ、無口でさ、口下手だけど、すげえそういうとこ尊敬してっけど…そろそろさ、教えてほしいんだ」というMCがあって「どんな福島にしてえのか、何をしてもらいてえのか、俺たちに教えてよ」と言っていたそうです。「どんなものが欲しくて、どんなふうにしたくて…。福島がさ、福島が考える未来が、福島の人の考える未来が、日本の未来だし、世界の未来だと思う」ってメッセージを彼らが語ったっていう話を聞いて、本当にそうだなと。

福島の人が「今、これが欲しい、これに困ってる」って言葉にして聞かせてくれよ、なんでもするよっていうふうに渾身の思いを込めて捨て身で言ってくれたんだけど、あいにくその言葉を持ち合わせてなくて。「ごめん大丈夫、なんかわりぃない」っていう感じで言ってしまうというか、言えなかったんだろうと思います。

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