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『サルゲッチュ』『ICO』『SIREN』…SIE JAPANスタジオ再編の衝撃とSIE「グローバル化」の背景とは?【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(5)
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  • 2021.04.20
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『サルゲッチュ』『ICO』『SIREN』…SIE JAPANスタジオ再編の衝撃とSIE「グローバル化」の背景とは?【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(5)

ライバルである任天堂、Microsoftの変化

JAPANスタジオの再編成は、2016年の本社移転から始まり、新たに作られた新ワールドワイド・スタジオのような、国際的・ジャンル的・サービス的にあらゆる観点において多様な体制を作り出す、グローバル企業として再誕したSIEという「新たな企業」の組織的変化の、ほんのごく一部だった。

このようなSIEの変化の裏で、他企業はどう動いたか。

任天堂は2017年にNintendo Switchを発表すると同時に、『スーパーマリオ オデッセイ』『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』『スプラトゥーン2』『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』『あつまれ どうぶつの森』など、任天堂ブランドやSwitchというハードの特色を活かした独占タイトルを次々に発表。数百~数千万本の売上と絶大な評価をもとに、改めて自社IP(ソフト)とハードの強みを押し出す戦略を成功させた上、カプコンの『モンスターハンター ライズ』などサードタイトルも充実させている。

SIEのもう一つのライバル、Microsoftはどうか。Xbox Oneの特に国内不振は苦しかったものの、次世代ハードXbox Series S/Xに先駆けビデオゲームのサブスクリプション「XBOX GAME PASS」を発表。ソニーにも「PS Now」というサブスクサービスは存在するが、GAME PASSは同じMicrosoftであるWindows(PC)にも同時に対応しながら、EAの「EA Play」など既存のサブスクを吸収。さらに近年では『Fallout』シリーズなどで人気を誇るBethesda社を買収することで、自社タイトル、サードタイトルの充実度において業界随一のサブスクサービスを構築することに成功した。

SIEはPlaystation 4時代でこそ両社に対し、1億台という大台を見せつけ、(国際的に)大きなアドバンテージを築いたが、両社も時代に応じ、また自分の得意分野を活かした反撃に打って出た。SIEは次弾としてPlaystation 5を発表し、こちらも好評であるものの、生産台数が需要に対して追いつかず、思うように普及できているとは言えない状況だ(余談だが、筆者はPS5をめぐる転売競争を記事にしている)。

今後もワールドワイド・スタジオから魅力的な独占タイトルが発表される予定だし、ハードの供給問題は時間が解決するだろう。とはいえ無策で任天堂やMicrosoftに勝てるほど、甘い状況ではない。それほど競争は激化している。今後、SIEはワールドワイド・スタジオのネットワークを駆使した、グローバル企業ならではの強みを見せつけていく必要があるだろう。またその「グローバル」の中には、当然日本も含まれる。日本のユーザー層に対して、JAPANスタジオ以上に魅力的で、夢中になるようなコンテンツを提供し続けることで、ジム・ライアン氏の言う「日本市場を未だ重視している」という主張を証明しなければ、日本のファンや市場を失う可能性がある。

また退社した多くのクリエイターたちに関しては、外山氏がBokeh Game Studioを設立するなど、各々の道で独立している。むしろこれから、特定のハードにこだわらない形で、かつてファンを魅了したような新しい名作を見せてくれることを期待したい。


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