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海辺にポツンと1本の外灯。「いつか帰ってくる場所」になる現代アート【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(12)
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  • 2021.05.14
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海辺にポツンと1本の外灯。「いつか帰ってくる場所」になる現代アート【連載】「ビジネス」としての地域×アート。BEPPU PROJECT解体新書(12)

いつか帰る場所を照らす光

3月末、桜の咲く埠頭で開催したお披露目会で、《息吹》を前に区長さんはこんな挨拶をしてくれました。

「私は4月が嫌いです。ここで育った子どもたちは、春になると進学や就職で旅立っていきます。私たちは毎年、少し寂しい思いで彼らを送り出してきました。しかし今回、島袋さんによってこの古い外灯が蘇ったことで、地域を照らす希望の光が灯ったように感じています。

今、この地域ではさまざまな変化が起こり始めています。砂浜の清掃活動を続けたおかげで、去年の夏にはウミガメがやってきて、卵を生んでくれました。今回は島袋さんが来て、作品をつくってくれました。いつの日かこの光を頼りに、ここを巣立った人々が帰って来られるよう、この外灯が帰る場所を照らす目印となっていくことを期待しています」

2021年3月に開催した作品のお披露目会に集まった人々との記念撮影

その話を聞きながら、僕はBEPPU PROJECTの活動を始めてからの15年間のことを考えていました。

今年も新卒者を含む新入職員を迎え、新たな出会いがありました。それと同時にうちを卒業していった人たちの顔もたくさん思い出されます。

それぞれの人生において、いろいろなタイミングや事情があって、出会いもあれば、別れを選択しなくてはいけないこともあります。同じ組織に属している時は、その人の将来や成長において糧になるよう、さまざまな経験や学びの機会を提供することができます。しかし、この場を離れた人に対しては、寂しさも伴いながら思いを馳せることしかできません。

しかし最近では新プロジェクトの観客として、時にはビジネスパートナーとして、関わり方は変わっても共に過ごす機会を得ることも増えてきています。

「帰ってきたよ」と、お土産を持って事務所に立ち寄ってくれる彼らを迎え入れるたびに、帰ってくる場所を育てることの大切さを実感します。

今年も新たなプロジェクトが始まります。そして大きな挑戦に向けた、準備の1年となるでしょう。次回は、いつか帰ってくる場所を作るための、移住定住促進に向けた取り組みについてお話したいと思います。


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