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バーチャル空間でも通用した“伊勢丹の作法”と目指す「アナログ的DX」|三越伊勢丹 仲田朝彦(後編)
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  • 2021.06.09
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バーチャル空間でも通用した“伊勢丹の作法”と目指す「アナログ的DX」|三越伊勢丹 仲田朝彦(後編)

リアル世界のブランディングはバーチャル世界に持ち込めるのか?

―― 接客しているお姿を拝見したのですが、キャラ物のアバターなどは使わず、あえて現実の姿をそのまま持ち込んでいらっしゃいましたね。

バーチャル空間上での仲田氏のアバター。

仲田:「リアル世界でブランディングされたものをバーチャル世界に持っていった際に、そのブランディングの価値はインポートされるのか」という疑問を持っていました。つまり「伊勢丹の販売員」という外見をまとうことで、それによって信用を得られたり、お客さまに喜んでいただけるかという実験も兼ねていたのですが、これは当たりでした。

アバターは「なりたい自分になれる」という自己超越的なソリューションなので、リアルな僕を持っていくというのは、本来のアバターの本質からはずれるなと思っていました。でも何にでもなれるならば、「バーチャル伊勢丹に立つ時は伊勢丹の販売員の外見を装う」という服装の1つと考えればいいのかなと思いました。ただ、見た目が少し怖いといった意見もいただき少しショックだったのですが(笑)。

――その辺は技術の進歩ですぐに精緻な姿を持ち込めるようになりそうですね。しかし人々がバーチャルに慣れてくると、今現在感じるような新鮮な驚きは減衰していくようにも思います。

仲田:僕もそう思います。あと1、2年もすればそこまで話題にもならなくなるかもしれません。目指すべきは「話題」になることではなく「体験」の質です。それゆえに、この事業はバーチャル伊勢丹だけの事業にしない方がいいと思っています。つまり、バーチャル世界の上に、伊勢丹以外のコンテンツをつくる必要があると思っています。

というのも、「バーチャルの伊勢丹でのみ、お買い物ができるサービス」ですと、利用いただくお客さまが限定されてしまいます。普通に生活していても、お買い物に使う時間ってコンビニなどを含めても、3%を切ると思いますし、せっかくバーチャル上で色々できるのに、お買い物しかできないソリューションというのは、僕個人としてもあまり魅力を感じない。なので、伊勢丹の外の領域については、異業種と一緒にコンテンツをつくっていきたいと思っています。

次ページ:目指すのは「アナログ的DX」

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