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モデルナ社開発の「HIV のmRNAワクチン」、世界初となるヒトでの臨床試験を来月実施へ
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  • 2021.08.27
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モデルナ社開発の「HIV のmRNAワクチン」、世界初となるヒトでの臨床試験を来月実施へ

Photo by Shutterstock

文:岩見旦

新型コロナウイルスの感染拡大を抑える打開策とされているmRNAワクチン。mRNAワクチンは長年研究されてきたが、ヒトを対象に使用されたのは新型コロナウイルスが初めてであり、これまで大きな成果をあげてきた。

新型コロナウイルスのmRNAワクチンを手掛けた企業のひとつであるアメリカのモデルナ社は今、この技術を応用し、最も治療が困難なウイルスのひとつであるHIVのmRNAワクチンの開発を目指している。

来月からヒトでの臨床実験スタート

アメリカ国立衛生研究所の臨床試験登録システムに提供された報告書によると、モデルナ社は「HIVのmRNAワクチン」によるヒトでの臨床実験を9月19日に開始する予定だという。正式名称を「mRNA-1644」とする2種類のワクチン候補を使用することになっており、終了予定は2023年4月1日。ヒトでの臨床実験は世界初となる。

今回のフェーズ1臨床実験では、HIVに感染していない18歳~50歳の健康な成人56人が参加。ワクチンの安全性を検証し、基本的な免疫反応を調べることが目的だ。今後、フェーズ2、フェーズ3を経て、このワクチンが多くの人々にとってHIVの感染予防の効果があるのか調べることになっている。

およそ40年前にHIVが発見されて以来、この感染症に対する治療法は進化してきたものの、治癒させることは出来なかった。そこで、HIVに対抗する「広域中和抗体(bnAb)」を産出するワクチンの登場こそが、「切り札」と目されてきた。ところが、『Science Alert』によると、少なくともこれまで開発されたワクチンでは、そのような反応を完全に引き起こすまで至っていなかったとのこと。そこで、mRNAワクチンでのアプローチに大きな期待が掛かっている。

さまざまなウイルスに対抗するmRNAワクチン

モデルナ社は今月発表のリリースにて、この「mRNA-1644」に加えて、「mRNA-1574」と呼ばれる別のHIVのmRNAワクチンを開発していると発表した。また心臓疾患やガン、希少疾患など、さまざまなウイルスに対抗するmRNAワクチンの研究も行っているという。

mRNAワクチンの登場は、病気と戦う人類にとって「ゲームチェンジャー」になるのだろうか。世界中がその進展に注目を集めている。


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