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100億円以上の脱税で摘発も。加熱するライブコマースの「有名インフルエンサー頼み」を乗り越える、新たな販売テクニック【連載】中国ウォッチ・ナウ!(3)
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  • 2021.12.23
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100億円以上の脱税で摘発も。加熱するライブコマースの「有名インフルエンサー頼み」を乗り越える、新たな販売テクニック【連載】中国ウォッチ・ナウ!(3)

「SNS系」か「EC系」かで文化や売れる商品が異なる

今まで中国のライブコマースはEC大手アリババグループの独壇場だったが、近年はSNSサービスを展開する各社が続々と機能を搭載し始め、すでに戦国時代。EC側もSNS機能を搭載するなど垣根が溶けてきている。

ライブコマース機能を搭載したプラットフォームの違い

ライブコマース機能を搭載したEC系の代表例はアリババの淘宝(Taobao)で、先に述べた2人のトップインフルエンサーもここでライブコマースを行なっている。ある視聴者の女性はすでに何十本も口紅を持っているのに「口紅王子」こと李佳琦のライブを見るとついついまた買ってしまうそうだ。それほどインフルエンサーの力は強い。

一方、SNS系で特に勢いがあるのは、中国本家版TikTokの抖音(Douyin)だ。日本企業の中国マーケティングを手がけるエーランド株式会社代表の安田加奈子さんはこのように語る。

「ECプラットフォームはショッピングを楽しむ人や、何か欲しいものがある人が訪れるものですが、SNSから始まった抖音のライブコマースはスキマ時間に動画を観て出てきたものをパッと買うスタイルで、ニッチなもの、珍しいものが売れます。例えば農村にいるグルメインフルエンサーが自分たちの作った調味料を売ったり、在日中国人が日本の便利グッズを紹介して稼いでいたりします」

ECプラットフォームによるライブコマースはSNS機能が弱いためバズりにくいが、抖音なら知名度の低いライバーでも「おすすめ」に表示されて急にバズるチャンスが出てくるのである。

プラットフォームとしてはタオバオと抖音の2強状態が続いていると言えそうだが、すでに「ビリビリではオタク向け商品の売れ行きが好調」といったかたちで、商品や紹介スタイルによる棲み分けもかなり進んできている。とはいえ各プラットフォームがライブコマースに本腰を入れたのはほんのここ数年、ほとんど場合1〜2年ほどの話である。ここから勢力図が大きく変わってくる可能性もゼロではない。

有名インフルエンサーに頼るか、自社販売員を育てるか

ライブコマースの販売スタイルは二種類に分けられる。インフルエンサーと販売員スタッフだ。

今や絶大な影響力を持つようになった有名インフルエンサーは、出演料も高額なうえレベニューシェアも要求、紹介の依頼をしてくる企業の商品品質を厳しく選定し、かつ目玉商品と言えるぐらいの最低価格で販売できるよう値下げ要求を行う。そのため消費者からの信頼度は高まり、彼・彼女らの紹介する商品は安心して買えると評判だ。

一方で、企業からすると有名インフルエンサーに取り上げてもらうことで爆発的な売り上げにつながり知名度は上がるが、利益はほとんど出ないのが現状。そして当局の規制強化の動きから、企業は今後有名インフルエンサー依存のリスクも検討せざるを得なくなっている。

また、有名インフルエンサーの数は一握り。彼らに依頼するお金も体力のない弱小企業にはどんな方策があるのか?

知名度の低い企業は主に2つの方策を取ることができる。1つ目は、有名インフルエンサーでなくとも自分達の商品と親和性の高いライバーに商品を紹介してもらう方法だ。ライバーには「輸入品専門」「化粧品専門」のような得意分野があり、それぞれの分野に興味のあるフォロワーにもピンポイントで届きやすい。

2つ目は、企業が自分たちで販売員ライバーを育てるやり方だ。自社の販売員が商品を売れば値下げ勝負にならないため利益率が高い。方法もさまざまで、例えばある販売店はライバーが商品紹介をほとんど行わず、視聴者からのコメント(質問)が来たら答えていくカスタマーサポートのような使い方をしている。確かに、買う商品が決まっている人にとって商品の特徴や在庫状況などを説明してくれるこのスタイルはありがたい。

各プラットフォームで活躍するライブ配信者。カスタマーサポートのようなスタイルや顔出しせずに商品だけを表示したり、パフォーマンスを行ったりするなど多種多様

次ページ:日本のライブコマース事情とこれからの戦い方

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