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- BUSINESS
- 2019.02.06
義足に挑戦する乙武洋匡さんに、人工内耳の装用で悪戦苦闘した体験者から応援の声
文:岩見旦
乙武さん、義足プロジェクトのクラウドファンディングに1,400万円
あの乙武洋匡さんが歩けるようになるかもしれない。発端は、乙武さんが11月13日にInstagramに投稿した1枚の写真。
義足を付けランニングスタジアムで立っている自身の写真を、「人生初」「仁王立ち」「歩いてみせる」という力強いハッシュタグとともに掲載。乙武さんが電動車いすから立ち上がる様子は、この日開催された「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」で披露された。
乙武さんが装着している義足は、従来のものと異なり、最新鋭の技術を搭載。メディアアーティストの落合陽一さんが率いるxDiversity(クロス・ダイバーシティ)が開発を進め、ソニーコンピュータサイエンス研究所の遠藤謙さんが中心に行ってきたロボット技術を用いた義足を使用している。
乙武さんは1月12日、同プロジェクトの周知活動も含む活動費を集めるため、クラウドファンディングを開始。6日間足らずで目標金額の1,000万円を集め、現在は1,400万円を突破している。
人工内耳を装用しているくらげさんのツイートに注目
義足に挑戦する乙武さんに、SNS上で応援の声が多数寄せられている。中でも注目を集めているのが、聴覚障害者で人工内耳を装用している作家のくらげさんのツイート。
人工内耳をつけて「これまで使わなかった脳が成長する」って経験をした身からすると乙武洋平さん(@h_ototake )がいまやってる義足プロジェクトがどんだけきっついかわかるんで応援したい。金ないけど。サイボーグの先輩としてアドバイスさせてくれないかな。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
手足がついてる身からすれば「義足なんて慣れればいいでしょう?」だし、もともと聞こえてる人からすれば人工内耳のリハビリも「聞こえてりゃ慣れるでしょ」なんだけども、赤ん坊からのやり直しを成人してからやってるようなもんだもの。もともと無いんだから。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
人工内耳ね、つけた直後は音が全部アルミホイルをクシャクシャにするときの耳障りな音しか聞こえないんですよ。ある程度は覚悟していたしそんなに簡単でもないとわかってましたけど、それでも最初はショックでした。これ、脳に音を認識する回路ができてないからなんですけど。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
っか、物理的に痛みを感じるんですよね、まじで。リハビリしてる間、ひどいときは脳の中をアルミのたわしでこすられるような感覚に襲われました。あれはもう経験したくないっすね。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
そもそも健常者から障害者に対する勘違いがあるというくらげさん。自身が人工内耳を装着した直後はアルミホイルをくしゃくしゃにするときの耳障りな音しか聞こえなかったという。物理的な痛みを感じ、ひどいときには脳の中をアルミのたわしで擦られているような感覚に襲われたと振り返った。これは、脳に音を認識する回路が出来ていないからとのこと。
それから数カ月でやっと音の輪郭が固まってきて、補聴器つけるより理解度が急速に高まった時期がありました。成長曲線ってやつですね。で、二年くらいするとだいたい会話に困らなくなりました。もともと補聴器で会話してましたけど比較ならないほど理解度が高まりました。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
で、人工内耳をつけてよかったなー
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
となったんですが、人工内耳をつけて5年くらい経った夏に今の妻とお寺に行ったんです。そしたらなんか鳴ってるなーと思って妻に「なんだろうねこれ?」と聞いたら「セミだよ」と。その瞬間、頭の中でセミがはじけたんですね。
たとえるなら英語がいきなり「言葉」として聞こえるようなもんなんでしょうけど、「雑音」が一瞬にして「蝉の声」に変わったんですよ。「ああ、これが蝉の声なのか」と涙が出たのを覚えています。これが私の中で「音」が質的に変わった瞬間です。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
質的な変化とはこれまで「聞く」というのはほとんど「会話で情報をやり取りするための方法」でした。まぁ、音楽とかも聴いてはいたんですが、「リズム」をとるのが楽しいかったからで「音色」まではわかりませんでした。それが一気に「音の叙情」というものを意識できるようになりました。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
幾多の苦難を乗り越えたくらげさんはその後、音の輪郭が固まり、飛躍的に言葉の理解度が高まったとのこと。人工内耳を装用して5年ほど経過した頃、鳴っていた雑音がセミの鳴き声と教えてもらった瞬間、音が質的に変化し、一気に「音の叙情」を意識できるようになったという。
それ以来ですね、何か気になる音がしたら妻に「これ、何の音?」と聞くようになったんです。蝉の時ほど鮮明に覚えている瞬間はないのですが、それでも鈴虫の澄んだ声やカエルの合唱を理解できた時には感動しました。まぁ、1年にひとつくらいですけど。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
それ以来ですね、何か気になる音がしたら妻に「これ、何の音?」と聞くようになったんです。蝉の時ほど鮮明に覚えている瞬間はないのですが、それでも鈴虫の澄んだ声やカエルの合唱を理解できた時には感動しました。まぁ、1年にひとつくらいですけど。
— くらげ@耳の悪いADHDのオッサン (@kurage313book) 2019年2月5日
鈴虫の澄んだ声やカエルの合唱を理解できた時には感動したというくらげさん。今では奥さんと「今年1年はどんな新しい音が聞こえるようになるんだろうね」と会話を交わすという。昨年は、飛行機の音の違いで高度がある程度わかるという経験をしたとのこと。
あらゆる人に勇気と可能性を与える乙武さんの挑戦
「これまで使わなかった脳が成長する」という経験をしたくらげさんだからこそ、今回の乙武さんの挑戦には、多くの人が想像できない苦労や挫折が伴うと感じたのだろう。実際、乙武さんも義足の練習について「本当にしんどいし、怖い」とツイートしている。
これまでは、朝起きて「今日も義足の練習かあ…」とげんなりすることもあったけれど(ホントにしんどいし、怖いんですよ)、みなさんにお披露目してからというもの、多くの方からの声援が聞こえてくるようで、「今日も頑張らなきゃ」と思えるようになりました。ありがとうございます!
— 乙武 洋匡@義足プロジェクト (@h_ototake) 2018年11月20日
今回の挑戦は、先天性四肢欠損の人をはじめ身障者、健常者問わず、あらゆる人に勇気と可能性を与えるに違いない。