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バーでナチス将校を誘惑する少女は、実はレジスタンスの暗殺者。映画のような生き様が話題に
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  • 2019.03.14
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バーでナチス将校を誘惑する少女は、実はレジスタンスの暗殺者。映画のような生き様が話題に

National Hannie Schaft Foundation

文:岩見旦

あるオランダ人女性の生き様が今、SNSで注目を集めている。その女性とは、昨年92歳で亡くなったフレディ・オーバースティーゲンさん。ナチスの支配者やオランダの反逆者と戦うことに命を捧げた、最も著名な女性レジスタンスだ。

14歳でレジスタンスに加わる

フレディさんは1925年にオランダのハールレムで生まれた。14歳の時に、オランダのレジスタンスに、姉のトリュスさん、友達のハニー・シャフトさんとともに加わった。ダイナマイトで橋や線路を壊したり、ナチスの強制収容所からユダヤ人を逃したり、ナチス将校をバイクの籠に隠した消火器で処刑するなどの活動を行っていた。

フレディさん、トリュスさん姉妹とシャフトさん3人の定番のやり方は、まずバーに赴きナチス将校を誘惑。興味を示したらこちらのものだ。「一緒に散歩に行きましょう」と森へ誘い出して暗殺する。レジスタンスといえば男性という思い込みがあり、そこがナチス将校にとって落とし穴だったのだ。

後のインタビューで「私たちはこうするしかなかった」と振り返るフレディさん。「善良な市民を騙す人を殺すことは必要悪だった」とも。今まで何人殺したかという質問には、「あなたは兵士に何人殺したか聞くの?」と返した。

暗殺の経験に苦しんだ戦後

姉妹は第二次世界大戦を生き残った。フレディさんは結婚し、3人の子ども、4人の孫を授かりながらも、戦争のトラウマに苦しんだ。姉のトリュスさんはアーティストとなり、レジスタンスとしての経験を伝記に残した。

しかし、友達のシャフトさんはナチスが降参するほんの数週間前に捕らえられ、処刑されてしまった。戦後、シャフトさんに敬意を評して「国際ハニー・シャフト財団」が設立。フレディさんは取締役に就任した。シャフトさんの活躍は映画にもなり、オランダの子どもたちに語り継がれている。

姉妹にとってレジスタンスになることは誇りでもあり、苦悩の元でもあった。暗殺についてトリュスさんは「悲しいし、とてもつらい。いつも私たち姉妹は泣いた」と語っている。またフレディさんは地元新聞のインタビューに「銃を撃ってナチス将校たちが倒れた瞬間、私は彼らが起き上がるのを願っていた」と答えている。

「凄すぎて言葉が出ない」壮絶な生き様がSNSで注目

フレディさんのこのエピソードを、政治学者の鈴木一人さんが「凄すぎて言葉が出ない」というコメントとともに紹介。

11日に投稿されたこのツイートは約8,000リツイートを記録。「悲劇に涙が止まらない」「まるで映画のよう」「人間を変えてしまう戦争が怖い」といったコメントが寄せられた。

「戦争での殺人は英雄か」といった意見も挙がったが、フレディさん自身も大変傷つきながら活動をしていたことを念押ししておきたい。


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