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- CULTURE
- 2019.05.10
天皇陛下に「お疲れさまでした」と投稿し、芸能人が大炎上。しかし「誤用ではない」と専門家が徹底解説
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文:岩見旦
先月30日、ある芸能人が自身のInstagramを更新し、「天皇皇后両陛下お疲れさまでした」とねぎらいの言葉を綴った。
すると、この「お疲れさまでした」という表現に対し批判が殺到。「この表現に違和感を覚えました」「皇室をなんだと思っているのでしょうか」などのコメントが寄せられ炎上した。
果たして、目上の人に対する「お疲れさまでした」という表現は誤っているのだろうか。専門家から誤用ではないという指摘が相次いでいる。
目上への「お疲れさま」NGは新しい謎ルール
『三省堂国語辞典』の編集委員の飯間浩明さんは、この炎上に対し「目上への『お疲れさまでした』が不可とされるなら、それは新しい謎ルールの誕生だとしか言えません」とツイートし、「お疲れさまでした」が敬語として定着した経緯を解説した。
「天皇皇后両陛下お疲れ様でした」というインスタグラムの投稿が炎上したそうです。目上への「お疲れさまでした」が不可とされるなら、それは新しい謎ルールの誕生だとしか言えません。炎上を伝えるニュースは〈日本語の使い方としては間違っているかもしれないが〉と述べますが、べつに間違っとらん。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年5月6日
昔は「ご苦労さま」は目上の人に対しても使われてきたが、20世紀末に「目上に『ご苦労さまは失礼』」というそれまで無かったルールが誕生。1990年代には「上司には『ご苦労さま』より『お疲れさま』がふさわしい」と言われるようになったという。「お疲れさまでした」は目上の人への挨拶の新スタンダードだったのだ。
昔は、目上に対して「ご苦労さまでした」が普通に使われました。昭和天皇に対して三木首相(昭在位50年記念式典)や中曽根首相(在位60年記念式典)が「ご苦労さまで(ございま)した」と述べた例も報告されています。ところが、20世紀末に「目上に『ご苦労さま』は失礼」という謎ルールが生まれます。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年5月6日
倉持益子さんの研究では、1990年代に「上司には『ご苦労さま』より『お疲れさま』がふさわしい」と言われるようになった模様。平成17(2005)年度の国語世論調査では、上司をねぎらう場合に7割近くが「お疲れさま」を選んでいます。「お疲れさまでした」は目上への挨拶の新スタンダードだったのです。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年5月6日
各種国語辞典の「お疲れさま」を比較
飯間さんは各種国語辞典の「お疲れさま」の解説についてもピックアップ。三省堂国語辞典や明鏡国語辞典、現代国語例解辞典など複数の辞書が「お疲れさま」は目上の人に対して使うと説明している中、新明解国語辞典の第5版のみが「目上の人には用いない」と記載している。
各種国語辞典が「お疲れさま」は目上に(も)使うと記す中、『新明解』(旧版)は「目上の人には用いない」とあり、異例です。このことも記しておきます。昔の語感で説明しているのかもしれません。現在、「お疲れさま」を目上に用いてOKという辞書は多く、この用法を不可とするのはやはり酷でしょう。 pic.twitter.com/sZhEWU4iOB
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年5月6日
このことに関して飯間さんは、「お疲れさま」が多くの国語辞典に載るようになったのは、意外と最近であり、新明解国語辞典の第5版の説明はそれ以前の、まだ「お疲れさま」が敬語として出世する以前の昔の語感に基づいているのかもしれないと推察した。
飯間さんは「現在、『お疲れさま』を目上に用いてOKという辞書は多く、この用法を不可するのはやはり酷でしょう」とフォローした。
平成のマナー本から誕生した新たなルールか
『異名・ニックネーム辞典』の編纂を手がけた杉村喜光さんも、「お疲れさま」は「本来は上下関係なし」と自身のTwitterに投稿。平成になってからマナー本などに登場した新たなルールであると一刀両断した。
そして、「お疲れさま」が本来上下の関係はない言葉と分かっているマナー本ですら、「近年はそう思われているので、会社内ならば大丈夫でも社外での挨拶には使わない方が良いでしょう」などと書いていることもあり、正しいマナーがじわじわ広がりつつあると説明した。
また、「了解しました」も同様の新たなマナーが浸透しつつあると杉村さん。新たなマナーを信じている上司も多くいるため、「使わない方がよい」と忖度する言葉になっているようだ。
山田優さんの「天皇皇后両陛下 お疲れ様でした」発言が炎上中らしい。
— 杉村喜光:知泉(三省堂辞典発売中 (@tisensugimura) 2019年5月5日
この「お疲れ様は目上の人に使ってはイケナイ」は平成になってからマナー本などに登場した新ルールだよね。本来は上下関係なし。
それ以前に記事の「違和感を感じる」が…。 pic.twitter.com/axgcAGrS2c
これは難しくて「お疲れ様」も「了解しました」も本来使ってもよい言葉なのですが、新マナーが異様に浸透して、それを信じている上司が多くいるので話が面倒くさくなり「使わない方がよい」という忖度語になっているという話です。
— 杉村喜光:知泉(三省堂辞典発売中 (@tisensugimura) 2019年5月6日
マナー講師は「え、そうなの?」と驚かせるネタを今も仕込み中です
確かに言葉は生き物だと例えられる。それが進化であるなら歓迎だが、批判の道具になることこそ違和感を覚える。