- CULTURE
- 2020.06.09
「ガジェット分解」は正しい、そして楽しい。技術をブラックボックスにしないために【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(4)
ハードウェアは他のハードウェアから学ぶ
僕が昨年翻訳出版した『ハードウェアハッカー』(技術評論社)は、スタートアップのハードウェア作りの第一人者と言われるアメリカ人のバニー・ファンが、自らの経験を書き記した本です。彼は本全体を通じて、「技術についてブラックボックスにせず、誰でも学習できるものにしていくことが大事だ」という考えを、自らの経験を通じて書いています。
エンジニアリングとリバースエンジニアリングは、同じコインの裏表にすぎない。最高のメイカーは、自分のツールをハックする方法を知っているし、最高のハッカーはしょっちゅう新しいツールを作る。回路を設計しようと思って始めたのに、気がつくとデータシートが曖昧、不完全、あるいは単に間違っているからチップのリバースエンジニアリングをしていたりする。エンジニアリングは創造的な活動だ。リバースエンジニアリングは学習的な活動だ。その2つを組み合わせれば、どんな難しい問題でもクリエイティブでな学習体験として解決できる。
僕は25年以上も学生をやってきたけれど、エレクトロニクスについては学校よりもリバースエンジニアリングから学んできた。僕は何かのハードウェアを設計したエンジニアが、何を考えてそういう設計にしたかを考えるのが大好きだ。熟練エンジニアは、巧妙な技を考案しても、それがどんなに革新的か気づかない。そうした技は文書化もされず、特許も取得されないものが多く、それを学ぶためには完成した設計物をリバースエンジニアリングして読み解いていくしかない。
(第4章「ハッカーという視点」より)
オープンソース・ソフトウェアは、ソースコードが公開されているソフトウェアを改善することにより、ソースコードを読み、ソフトウェアについて学んでいきます。ハードウェアでもそうした「他人が作ったものを見て、その向こうにある思想を学ぶ」ことはとても大事です。
僕もバニー・ファンに並んで、製品を分解して自分のブログに載せるなどの活動を続けている友人のメイカーに声をかけて、「分解のススメ」というオンラインイベントを開催したところ、150名ほどの聴衆が集まり、 Twitterのタイムライン含めてとても盛り上がりました。