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香港民主派・周庭さんの「かわいいは正義」を習近平に思い知らせるべき【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(7)
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  • 2020.08.12
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香港民主派・周庭さんの「かわいいは正義」を習近平に思い知らせるべき【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(7)

2:なぜ「かわいいは正義」レベルの感情が重要なのか?

なぜ「かわいいは正義」というレベルの感情の動きが重要かというと、この問題についてのもっと「政治的に真面目」な議論はどうしても相対化されてしまうからです。

香港問題は、単に「正義の民主化運動とそれを弾圧する中国政府」というだけの見方で切り取れる問題ではありません。

ある意味で、「欧米諸国の支配をはねのけて抑圧された中国人民が自分たちの正当な権利を回復していくストーリー」的な見方だってできてしまう。

「政治的に大真面目な議論」だけだと、「全く別の交わらない論理」同士が非妥協的にぶつかりあってしまうことになるんですね。

そうすると、中国の民主化についてそろそろ真剣に考えて国際協調するべき…という趣旨の前回記事で使った以下の図のように、

そもそも自由や民主主義よりも、国家の安定や滞りのない運営の方が優先されるべき…と考えている人が多い社会において、「自由や民主主義を守れ」というだけの論理で立ち向かっていっても全然響いていかないというか、むしろどんどん彼らも意固地になっていってしまう構造がある。

要するに、

・ガチンコの中国ナショナリズムの信奉者
                     VS
・ガチンコの「自由と民主主義の戦士」

こういう↑二者だけしか関わっていない状態では、この問題は平行線で紛糾し続けこそすれ、決して解決の糸口すら見いだせない状況に追い込まれていくことになります。

こういう「押し合いへし合い」だけをやり続けることの最大の問題点は、

「中国に関わっている普通の生活者(多くの中国人や、ビジネスで関わる外国人)」は、現状としての中国政府支持を続けるしかなくなること

なんですよね。

実際、日本人の中でも、中国と普通に関わって生活している多くの人は、この問題に対してかなり冷淡な態度(“民主活動家の視点から見れば”ということですが)を取っていることが多いように見受けられます。

彼らとしても、日本人として育った当たり前の感情としての自由と民主主義的な価値観を持っていることが多いわけですが、「そうはいっても、じゃあ中国13億人を今のやり方以外でどう混乱せずに運営すればいいのさ?」という部分があまりにも考慮されないままだと、おいそれと「民主化バンザイ」というわけにもいかなくなってしまうわけですね。

3:「かわいいは正義」的な感情が、拮抗状態に変化をもたらすかも?

「かわいいは正義」的な形で周庭さんに注目が集まることは、この「大真面目な政治的目線」以外の「普通の目線」がこの問題に注がれることを意味します。

ガチンコの「政治的議論」だと、そもそも平行線になってしまうし、普通に中国でビジネスしていたり中国の学術界で活躍していたりする日本人としたらおいそれと乗っかるわけにもいかないことになりがちです。

しかし、

かわいい女の子が、よくわからない罪状で、強権的な中国政府に逮捕されて連れていかれた…という絵面のパワー

というのは、「普通の生活者」レベルでも無視できない影響力を持ちうるかも、しれません。

前回記事で書いたように、この「政治的対立」に新しい調和をもたらすには、以下の図のように、

今みたいに国内外全方位的に喧嘩を売りまくったり、香港への締付けを果てしなく厳しくしたりするような習近平政権の態度は、商売の邪魔になっているということを理解してもらうように持っていくことが必要です。

もちろん「ガチガチの政治的ナショナリストの中国人」にそう思ってもらう必要はないが、「普通の生活者」の中国人や中国と関わる外国人に対しては、「大事なお客さん」として扱って、彼らの考え方を徐々に変えていってもらう必要がある。

中国民主化といっても、いきなり「民主国家」レベルの完全な投票システムとか、一切の検閲のないインターネットとか、そういうものが実現すると考えている人は、今の時代もうほとんどいないでしょう。

要するに、「中国政府の強権性」が、末端で果てしなく酷い抑圧を起こしてしまわないように監視する目線がちゃんと国際社会との間でチェック&バランスとして働くようになる…それがまずは第一歩なんですね。

そのためには、まずは「政治の議論」を超えた「普通の生活者の目線」をも動員して、「中国政府が無茶をやらないようにする」監視を行えるようにしていくことの意味は大きいでしょう。

次ページ:4:立場の違いを超えた「項羽と劉邦作戦」で!

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