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「トランプが負けたら世界は中国に支配される」は本当か?「民主主義だってダメじゃん」をギリギリ回避するための日本的中庸思考【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(8)
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  • 2020.11.07
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「トランプが負けたら世界は中国に支配される」は本当か?「民主主義だってダメじゃん」をギリギリ回避するための日本的中庸思考【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(8)

5:対中国の旗印はアメリカ頼りでなく自分たちで掲げるべき

Photo by Shutterstock

「すべてを社会の中の保守派の人たちのせいにする」「すべてを移民とか外国人とかのせいにする」…そのどちらであるにしろ、「社会にある問題は全部敵側のあいつらが悪い」と騒ぐ幼児性の暴走は、あらゆる先進国で大問題になっており、それによる混乱は、「じゃあもう中国みたいな強権的政体でいいじゃん」という結論になってしまいかねない問題があるわけですよね。

「中国の強権性と対決する」というには、まず先進国内において「民主主義でもちゃんと社会を統治できる」ってことを示す…という必要があるわけですよ。

「中国的強権的政体」の方が人々は幸せになれるよねっていう結論になりかねない混乱を続けたら、中国との対決どころじゃなくなるわけですからね。

「陰謀論」界隈ではバイデンになったら世界は中国に支配されてしまう…とか言われていますが、しかしこの記事で書いたような「プロ」レベルでちゃんと現実を見ている人の間では、比較的バイデンの方が対中国でちゃんと対決できると言っている人は多いです。

その理由は、

「トランプ的な混乱」が続くと、「民主主義という制度そのものへの信頼」がそもそもダメになってしまい、じゃあ中国的な強権主義でいいじゃんという世界的コンセンサスができてしまう

ところが大問題なんですよ。

他にも、中国は「欧米」の「欧」と「米」の間を分断して「欧」を自陣営に取り込む「離間の計」を常に仕掛けようとしているわけですが、トランプがどんどん「欧州人を怒らせる」ようなことをしまくるので、余計に中国を利する結果になってしまっている。

「見た感じのコワモテさ」で「トランプじゃなくなったら中国に支配されちゃう」みたいな見解を持つのは、ちょっと他人頼みすぎて情けなさすぎるんじゃないですかね。

確かにバイデン民主党になると、「民主主義政体内のバグ」であるところの無責任な極左主義にどう対抗するのか…という問題は出てくる。

しかし、そこでちゃんと民主主義勢力全体を、現実主義的グリップを外さないようにリードしていく役割をこそ、日本が担うべき道なはずです。

その道を進むことによってのみ、過去20年現実への責任感ゆえに比較的保守的な道を選んできた私たち日本人の本能的選択が、いわれなき侮辱を受け続けてきた理不尽さを跳ね返すことができる道でもあるでしょう。

そういう「世界的な新しい秩序感の中核」となるような旗印を掲げていくことで、逆に自分たちの内側において、なんでもかんでもとにかく「はんたーい!はんたーい!」しか言わない勢力をちゃんと掣肘して、世界的情勢変化に応じて現実的な対策を一歩ずつ打っていける態勢を成立させていくことも可能になる。

「無責任な極左主義の蔓延」を抑え込んだまま、一歩ずつ現実的対処を積み重ねることができる「民主主義政体」を実現する。

そうすれば、安倍時代の日本外交がポピュリズムの蔓延に苦しむ世界中の先進国から実は頼りにされていたように、「極左VS中道」時代の世界的潮流の中で、日本という国が持っている志向が「灯台」として頼りにされる状況にも持っていけるでしょう。

「“トランプ親分”じゃなくなったら中国に負けちゃうよぉぉぉ」なんて情けないことを言うのはやめましょう。

・欧米社会の混乱を後追いするのではなく、「極左VS中道」対立で混乱しまくる欧米が本来追うべき理想を“日本が”オリジナルに提示していく
・そうすることで、中国に対抗する軸は「トランプ親分の犬」になることによってではなく自分たちの力で打ち立てる

今回のアメリカ大統領選挙の結果を受け止めて私たち日本人が取っていくべき進路はそういうものであるべきです。

この記事に共感された方は、さらに発展編として、今日本で問題になっている「学術会議人事問題」は、欧米文明中心の過去200年の人類史が転換していく時代に「通るべき課題」として目の前にあるので、単に「学問の自由」原理主義だけでは解けない問題なのだ…という話をnote記事「「学術会議」人事問題は、単に「学問の自由原理主義」では解決できない。「日本」と「学問」はどうすれば良い関係を構築できるのか?」で書いたので良かったらどうぞ。

また、この記事で書いたような、「欧米由来の“最低最悪のアンシャンレジーム”と”完璧な正義の俺たち”という世界観自体を超えて、各人の新しい“責任”のあり方を見出していく志向」を象徴するものとして「鬼滅の刃」の大ヒットはあるのだ…ということを書いた記事「爆発的ヒットの鬼滅の刃の「女性作者ならでは」の部分はどこにあるのか?「ルフィとは友達になれないが炭治郎とは友達になれそう」問題と「鬼滅の刃的ガールズエンパワーメント」について」がかなりnoteで好評をいただいているので、そちらもよかったらどうぞ。

感想やご意見などは、私のウェブサイトのメール投稿フォームからか、私のツイッターにどうぞ。連載は不定期なので、更新情報は私のツイッターをフォローいただければと思います。

また、この連載の趣旨に興味を持たれた方は、コロナ以前に書いた本ではありますが、単なる極論同士の罵り合いに陥らず、「みんなで豊かになる」という大目標に向かって適切な社会運営・経済運営を行っていくにはどういうことを考える必要があるのか?という視点から書いた、「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」をお読みいただければと思います(Kindleアンリミテッド登録者は無料で読めます)。「経営コンサルタント」的な視点と、「思想家」的な大きな捉え返しを往復することで、無内容な「日本ダメ」VS「日本スゴイ」論的な罵り合いを超えるあたらしい視点を提示する本となっています。


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