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10年間で日本人は進歩できたか? デマと不謹慎厨が跋扈した、東日本大震災を巡るツイッターの空気感から学べること【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(23)
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  • 2021.04.30
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10年間で日本人は進歩できたか? デマと不謹慎厨が跋扈した、東日本大震災を巡るツイッターの空気感から学べること【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(23)

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中川淳一郎

ウェブ編集者、PRプランナー

1997年に博報堂に入社し、CC局(コーポレートコミュニケーション局=現PR戦略局)に配属され企業のPR業務を担当。2001年に退社した後、無職、フリーライターや『TV Bros.』のフリー編集者、企業のPR業務下請け業などを経てウェブ編集者に。『NEWSポストセブン』などをはじめ、さまざまなネットニュースサイトの編集に携わる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)など。

同じ消灯要請も10年前とは異なる捉えられ方

ついに東京都の小池百合子都知事は20時以降の繁華街の「消灯」を求めた。これを受けてネット上では東日本大震災の頃の節電要請を思い出した、と書く人々が多数登場。緊急事態という意味では、2011年と2020年以降の状況は似ているが、その非常事態の象徴たる「消灯」を巡っては人々の意識はまったく違う。

なんというのだろうか、震災の時は「善意」「配慮」の消灯という捉えられ方をされていたのだが、今回は「嘲笑」の消灯、といった雰囲気になっている。過度なコロナ対策こそ必要と考える人であっても「さすがに消灯したら防犯上ヤバいのでは」や「戦時中の灯火管制か?」といったツッコミを入れている。まぁ「これくらいやらないと愚民は外に出てくるから必要」という意見もあるが。

震災時は原発が停まったわけで節電をすることには合理性があった。さらに、結果的に2万人超が亡くなったわけだし、岩手と宮城では津波で家を失う人が続出したし、福島の人々は原発に近い場合は家を出ざるを得なかった。茨城県も全壊2637棟、半壊2万5054棟と大きな被害を受けた。

寒い、密、プライバシーもない、しかも家族を失った末の避難所生活をする人々のことを考えれば東京の節電に伴う消灯など屁でもない――。そんな気持ちで節電には協力したし、消灯も当たり前といった受け止め方をされていた。だが、今回はさすがに「消灯はやり過ぎじゃね……?」的空気感がある。さて、ここでは東日本大震災をめぐるツイッター上の空気感について振り返ってみる。

この頃、ツイッターを開始する人が激増した。大震災の発生直後から電話がつながらなくなったが、ツイッターは無事に使えた。こうしたことから「災害に強いツイッター」というのが定説となり、コミュニケーションの面でも情報収集、発信の面で脚光を浴びたのだ。

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