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元ホームレスのナイジェリア難民少年、10歳でチェス・マスターに。天才少年のアメリカンドリーム
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  • 2021.05.17
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元ホームレスのナイジェリア難民少年、10歳でチェス・マスターに。天才少年のアメリカンドリーム

文:角谷剛

チェスを始めて1年で州チャンピオンに

当時7歳だったタニトルワ・アデウミ君(通称タニ君)とその家族は2017年、母国ナイジェリアから米国にやってきた。キリスト教徒である一家は、イスラム教過激派のボコ・ハラムの迫害から逃れるために難民となって脱出したのだ。

住む家もなかった一家はニューヨーク市内マンハッタンのホームレス・シェルターに身を寄せて、タニ君は地元の小学校に通い始めた。すると、その学校にはチェスを教える先生であるラッセル・マコフスキー氏がいた。

初めてチェスを知ったタニ君はすぐにその魅力に夢中になった。マコフスキー氏はチェスクラブでも教えていたが、一家には余分なお金はなく、クラブの会費を払うことが困難であった。そのことを知ったマコフスキー氏はタニ君の会費を免除し、クラブへの入会を認めた。そしてタニ君は本格的なチェスの勉強を始めた。

その後のタニ君の成長は目覚ましく、わずか1年後には小学校低学年のニューヨーク州チャンピオンとなった。トーナメントに参加するのは、裕福な家庭で育ち、高額な私立学校に通う子どもがほとんどだ。その中で、ホームレス・シェルターで暮らしていたタニ君の快挙は当時、『New York Times』にも取り上げられた。

2019年には、タニ君のチェス活動を応援するため、タニ君の父親が『GoFundMe』 でクラウドファンディングを実施。すると、総額25万ドル(約2800万円)以上の支援が寄せられた。

ただし、このクラウドファンディング以外で、有名な私立学校から学費を全額負担する奨学金、移民弁護士からの無料支援、家族が住む家を斡旋する申し出があった。そのため、集まったこの高額な支援金はすべて寄付にまわすことを決めた。

次ページ:目標は史上最年少のグランド・マスター

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