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テクノロジーに「自由の制限」を求める人、テクノロジーを「自由の拡張」につなげる人【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(3)
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  • 2020.05.13
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テクノロジーに「自由の制限」を求める人、テクノロジーを「自由の拡張」につなげる人【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(3)

オープンソース活動は「個人と社会の関係性」を変える可能性を秘めている

ここで改めて「テクノロジーが個人のものなのか、そうでないのか」を考えてみたいと思います。

プログラムは作ったとおりにしか動かないし、システムの目的を知らないとプログラムの修正もできないので、大きなシステムは社会的な協働の産物です。

今は、多くのシステムがオープンソースで協調的に作られています。

オープンソースのプログラム開発に使われるGithubでは、誰がどういう部分を開発/修正したのかが表示される。

すべてのプログラムがオープンソースに置き換わったわけではありませんし、プログラムを書かずに使う人からみたら世界は変わっていないのかもしれませんが、iOSやAndroidの中核を担うカーネルはオープンソースのソフトウェアです。インターネットを支えているサーバの多くがオープンソースのソフトウェアだけで構成されています。

GoogleやMicrosoft、Appleといった世界的な大企業、それこそ、その巨大さから「悪の帝国」とも言われがちな企業も、たくさんのオープンソースプロダクトを発表し、プログラミング言語などの自社のコア技術・製品にオープンソースの戦略を採用しています。Linuxが流行り始めた90年代末、「自分たちが販売するサーバの売り上げの脅威になるから、Linuxに対抗しよう」と大キャンペーンに資金投入したMicrosoftは、その後の情勢の変化と「入社してくる社員がオープンソース文化で育った人ばかりになった」ことにより戦略を変え、現在ではLinux Foundationの最大スポンサーになるなど、オープンソースの積極的な擁護者になっています。

これまで説明してきたように、「誰でも開発に関われ、派生版も作って構わない、独占できない」ソフトウェアは、そうでないソフトウェアを置き換えていっています。長期的に見ればそうした置き換えはもっと進むでしょう。オープンソースソフトウェアの反対語はプロプライエタリの(独占)ソフトウェアです。少なくともソフトウェアの開発に関しては、独占でない世界が日々広がっています。そして、マーク・アンドリーセンが言うように、ソフトウェアはすべての産業を食い尽くすでしょう。世界的な大企業の多くはソフトウェア開発を独占するのではなく、むしろオープンソース化を進める側にいます。こうしたオープンソースの存在によって世界が大きく変わり、今も変わり続けているのは間違いない事実です。

僕は「コロナ後の世界」みたいなものにあまり興味はありませんが、プログラムを書く人が増えること、コンピュータの役割が大きくなっていくこと、そしてそれによって変わる社会のあり方にはとても興味があります。

新型コロナウィルス対策で、日本が自粛対応で一定の成果を収めていることと、互恵的なシビックテックの活動が盛り上がっていることには、共通する根っこがあるように感じています。前回の記事「未来は過去より悪くなったことがない。テクノロジーへの関心が世界を進化させる」では日本人のテクノロジーに関する関心の低さについて取りあげましたが、日本でシビックテックの盛り上がりがますます広がることを僕は願っています。


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