FINDERS

「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)
  • GLOBAL
  • 2020.07.15
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!

「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)

2:「まあ、中国だから仕方ないよね」では済まされない時代になっている

香港における国家安全法の公布後、この二週間での言論弾圧的な運用は枚挙にいとまがないですが、中国とビジネスで関わる人などが意外と平温的な対応なのは、

「まあ、中国だしな」

という一種の“諦め”の感覚があるわけですよね。

香港人の「特別扱い」がなくなって「他の中国人と同じ」扱いになるだけじゃないか…どうせ香港でもそのうちネットが検閲されるようになって、習近平の画像をアップしただけで逮捕されたりするようになるんだろうけど、でもそれって「中国人」なら当然のことじゃない?何も騒ぐことはないよ…。

いや、そりゃそうなんですけど!

そうなんですけど、でもここで冷静に考えてみないと!!!

「そういう国」が何の制約もなく世界一の経済大国になってしまっていいのか?という課題について、そろそろ真剣に考えないといけない時代なんですよね。

日本にいるとあまり感じませんが、ここ数年ほど欧米社会における対中国観が急激に対立的になってきています。香港問題などを通じて「火を吹いた」ことで、やっとこの問題にあまり関心のなかった日本人にもそういう印象が出てきた頃でしょうか。

一方で日本のリベラル派は「自国政府への反骨心ゆえにアジアの隣国に盲目的に甘くなってしまう」傾向にあり、またこれは「ある程度中立的なジャーナリスト」ですら、「中国が言論抑圧国なのはまあ仕方ないよね」で済ませてしまいがちなことを考えると、「対・中国の世界的な論調の変化」についてちゃんと知るためには、ときには日本の保守派の人たち(の中のマトモなジャーナリスト)の本を読むといいと思います。

先述の福島香織さんからは著書が出るたびに献本を頂いているんですが、“普通の中国ウォッチャー”の情報をたまに見ているだけだと「まあ中国だししょうがないよね」で済ませてしまいがちなところに、ちゃんと切り込んで「このままで覇権国家になられたら全世界が困るんだけど!」という主張をされているのを見ると、「当たり前すぎることを改めて言われてハッとする」ような気持ちになります。

最近の福島さんの本のタイトルからは、「なあなあにせず、ちゃんと対決しておかないとヤバいぞ」という危機感が凄く感じられます。

直近に出た本ですと、『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』(ワニブックス)『コロナ大戦争でついに自滅する習近平』(徳間書店)なんか、僕も含めてリベラル派寄りの人間からするとちょっと「ギョッ」とするタイトルの付け方に感じるかもしれませんが、「それぐらいの危機感」を持ってしかるべき問題なのだ…ということを、福島さんの本を読むたびに思います。

伝統的に中国に甘かった欧米社会がここ数年急激に態度を硬化させたのも、そういう意味での「全世界的な民主主義の維持に対する責任感」ゆえのものだと言えるでしょう。

「ムカつく自国政府をとにかく叩くこと」よりも、「全世界レベルでの民主主義の危機」にちゃんと声を上げることを優先するべきだ…という良識の最後の一線が一応保たれていたということですからね。

3:「アンフェアなハカリ」を使い続けると、バランスを取るためのヘイト的感情が必要になってしまう

別に中国が台頭するのはいいし、アメリカが必ずしも完全な正義の存在というわけでもないことを考えれば、拮抗するパワーがあることはプラスの面すらあるでしょう。

しかし、「今の中国政府」のような国内・国外の全方位的に異論を封殺しまくるような政体のままで世界一になられるのは人類の危機です。

リベラル派の人間には許しがたいトランプ大統領のようなモンスターが生まれてしまうのも、日本国内における一般的な対中国人ヘイトのような問題が起きてしまうのも、「制度間の利ザヤ取り」的風潮への反感があることは疑いないと思います。

安易な「まあ安倍だってやってるし」じゃなくて、「同じハカリで測られる」ようにチェック&バランスを働かせるゴールを描いていかないと、中国は自分たちが崩壊しないようにさらに強権的になっていきますし、周辺諸国はさらに警戒して中国へ批判的になっていきますし…というエスカレートの結果、どこかで戦争にならないとも限りません。

そこで、

・「中国VS欧米」的な対立構図の中で日本にできる態度の示し方はどうあるべきなのか?

・中国政府の横暴を掣肘しつつ、同時に日本という存在のあり方をうまく世界の中に打ち立てていくにはどうすれば良いのか?

そのための「戦略」を私は中国故事に習って「項羽と劉邦作戦」と呼んでいます。

ご存知の通り項羽と劉邦は漢王朝が創始される時代の歴史的人物ですが、軍事的才能に恵まれて大活躍するも苛烈な強権性が嫌気された項羽を、最終的に劉邦が逆転的に滅ぼして漢王朝を打ち立てました。

日本ができるオリジナルな貢献は、中国VS欧米のガチンコの「力VS力」的対立を、「項羽と劉邦」的な「包み込む路線」へと転換していく刺激を生み出していくことです。

次ページ:「項羽と劉邦作戦」の基本路線は、「習近平路線は儲からない」と理解させること

< 1 2 3 4 >
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!

SERIES

  • スタッフ目線で選ぶイベント現場弁当
  • あたらしい意識高い系をはじめよう|倉本圭造|経営コンサルタント・経済思想家
  • 高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」|高須正和|Nico-Tech Shenzhen Co-Founder / スイッチサイエンス Global Business Development
  • オランダ発スロージャーナリズム|吉田和充(ヨシダ カズミツ)|ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director
  • 高橋晋平のアイデア分解入門
  • READ FOR WORK&STYLE|岡田基生|代官山 蔦屋書店 人文コンシェルジュ