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「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)
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  • 2020.07.15
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「中国だから仕方ないよね」では済まされない。激化する中国包囲網の中で日本が取るべき選択は?【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(6)

4:「項羽と劉邦作戦」の基本路線は、「習近平路線は儲からない」と理解させること

今世界中で見られているような、民主主義社会において果てしなく有権者が自分のアイデンティティ政治的なものにしか興味がなくなり、「敵」を糾弾しまくるだけで現実的な社会問題の解決に向かえなくなってしまう混乱は、「民主主義という制度」に対する人類の信頼を大きく毀損させています。

要するに多くの本土中国人は、「民主主義なんて終わった制度だろ」と思っているわけですよね。

そういう存在に対して単に「民主主義を守れ」というだけでは響いていかないし、お前たちは俺たちの国家を不安定にさせて弱体化させるのが目的なんだろう?という疑心暗鬼にもつながります。

だから「項羽と劉邦作戦」の大事なポイントは、

「あんたらそのままじゃ繁栄できないよ?儲からないよ?」

という方向に中国を誘導しようとしていくことです。

全世界的に「戦狼外交」で喧嘩を売りまくっていることに中国本土民が無頓着なのは、本土ではそれがあまり報道されておらず、むしろ中国政府は世界から感謝されていると思っている人が多いのではないか…という話を中国在住日本人がSNSで述べているのを見ました。

しかし、そういう人たちも、実際に「商売上の影響」が出るようになれば目が覚めるでしょう。

国防的問題に直接関わるファーウェイのような企業の国際活動に制約がかかるのは勿論のこと、TikTokのような悪用するといっても限度があるような平和的なアプリですら敵視されはじめている現状は、徐々に中国人側の考え方を一般的に変えていくことに繋がるはずです。

要するに「項羽と劉邦」作戦の根本は、

・中国政府が「戦狼外交」をやめられない状況に追い込むことで、経済的ダメージを与えて、一般の中国人に「体制変更した方がいいかも」と思わせること

にあります。

5:「恫喝中毒」に追い込む刺激を与えていく

「隣国に対する恫喝をやめられなくなる」って、そんなのただ止めたらいいだけじゃん!って普通に考えると思ってしまいがちなんですが、しかし権威主義社会の安定感を維持するには、そのリーダーが曖昧なままでは済ませておけない問題が起きたりするんですよね。

先程紹介した『中国の大プロパガンダ』を読むと、中国の世界的プロパガンダ活動が、大量の資金を投入していろんなメディアや学術機関を買収することで一時は効果をあげつつも、そのうちだんだん「あまりにもプロパガンダ臭い」振る舞いによって自滅していくパターンがあちこちで見られて感慨深かったです。

これはたまに韓国の政治家の演説を見ていても思うことなんですが、何十年から百年もの自由主義社会の浸透によってグダグダに煮染めあげられた文化の国からみると、突然ギョッとするような権威主義的なトーンの発言を、自由主義の歴史の浅い国の政治家がすることってありますよね。

我々自由主義社会でグダグダになって生きている人間からすれば全然気にすることもない…という程度の「刺激」でも、権威主義社会の中でポジションを維持し続けるためには決して一歩でも引くわけにはいかない事情というものがあるわけです。

日本のネット用語でいうと「煽り耐性」が全然違うわけですね。その「煽り耐性のギャップ」に、私たちがつけ込んでいくべき「項羽と劉邦作戦」の鍵があります。

自由主義社会の中では「普通にできる」レベルのトーンで、権威主義体制下では「無視しておくわけにはいかない」レベルになる「必要十分な刺激」を与え続けていきさえすれば、ネットでよく見る「悪循環サイクル」絵のように「恫喝中毒」に追い込んでいくことが自然にできます。

次ページ:香港民主派・日本保守派・日本リベラル派へのメッセージ

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