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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)
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  • 2021.07.19
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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)

3:とはいえ大事なのは「空気」のマネジメント

Photo by Shutterstock

とはいえ、結局は「詳細なペルソナへのメッセージング」と同時に、マスマーケティング的なイメージづくりも非常に重要なのは言うまでもありません。

私は経営コンサル業のかたわら、色んな個人と文通をしながら人生を考える仕事…というのもやっているんですが(興味ある方はこちら)、その文通相手で日本の大企業に勤めているキャリアウーマンさんによると、

職場のお局さんが反ワクチン派で、まわりにも「やめときなよ〜」とか言ってたのに、職場接種の申し込みが始まったら空気に負けて打つことにしていて面白かった

と言っていて笑ってしまいました。

いわゆる「国籍ジョーク」で、アメリカ人に何かさせたいなら「それをしたら英雄になれます」と言えばよく、フランス人には「それをするな」と、ドイツ人には「それをやることが規則です」と、イギリス人には「それをやればあなたは紳士です」と、日本人には「みんなやってますよ」と言えばいい…的な話がありますが、やはり日本人を動かすには「空気」が大事なのかもしれません。

「日本のマスコミは反ワクチンばかりを煽っていてけしからん」というネットの風潮に反して、確かに子宮頸がんワクチンの時はそうでしたが、こと新型コロナに関しては結構マトモな状況にはなっていると思います。

たまたま先日観た「報道ステーション」では、副反応の報道はしつつ、ちゃんと「リスクをリターンが明らかに上回っている」という識者のコメントでキチンとまとめており、ネットの風評ほど無茶な報道はしていないように見えました。一部のネットメディアや週刊誌、ひょっとするとテレビでもお昼のワイドショーの一部にはもう倫理観とか吹き飛んでいる例もあるかもしれませんが、キー局レベルの“報道“番組関係者の良心はまだ一応保たれていると言ってよいのではと感じました。

とにかく日本の場合、変に「反ワクチン派を攻撃する」よりも、「みんな打ちますよね」的空気をいかに作れるかが大事であるように思います。

元々SNSでの存在感ほどには実際の数が多くない反ワクチン派に「VS(対決)」モードでつっかかっていくと、そのこと自体が「反ワクチン派」にとって非常に大きなプロモーション効果を持ってしまうんですね。

また、マスに見た時に「余計に彼らをプロモートしてしまう」効果だけでなく、反ワクチン派の個々人レベルで考えても、「強固な反ワクチン派の人を必死に説得して転向させようとする」ようなことは逆効果が大きいのではないかと私は感じています。

「強固な反ワクチン派」を無理やり転向させようとすると、色々と副作用的に「さらに強固な反ワクチン派」になりかねない恐れもあるからです。

4:「自分に限った場合の反ワクチン派」を悪魔化しないようにしよう

もう少し、「反ワクチン派」の“個人”像に迫ってみましょう。 あなたのまわりに「反ワクチン派」はいますか?私はこれまで身の回りで数人出会いました。

先述した「文通の仕事」でつながっている個人投資家の方からも「実は私は反ワクチンで…」とカミングアウトされて、その人は他の話題ではものすごく理性的で洞察の鋭い人なので、私はびっくりしてしまいました。

で、実際に「反ワクチン」の人と何人か話してみて思うのですが、

・「自分に限った場合の反ワクチンの人」

・「他人が受けることも反対する“反ワクチン運動”をする人」

はかなりトーンが違うというか、人のタイプとしても違うように思います。

SNSで必死に反ワクチン派の投稿をしまくるような人や、ビジネス的に大規模に「反ワクチン運動」の旗を振って他人を転向させまくろうとする「反ワクチンの親玉」さんたちへの対処については、次回の記事で扱うことにして、まずは案外結構隠れていそうな「自分に限った場合の反ワクチン派」の話について考えます。

「自分に限った場合」の人は結構冷静なインテリタイプの人も多くて、色々と冷静に情報を得た上で、「自分のこだわり」としてリスクを上回るメリットがないと感じているとか、とにかく余計なものを体に入れたくないとか、それぞれいろんな理由で自分自身は打ちたくないと思っている。

しかし、そのタイプの反ワクチン派の人には、他人が打つのをわざわざ止めようとか、政府がやろうとしている施策を邪魔しよう…という人は多くないように思います。

友人のアメリカ人なんかは、反ワクチンについて持論を述べていた自分のYouTubeチャンネルをGoogleに停止されたりしたんですが、そのことについて真剣に怒ってるというよりむしろ面白がっていて、

「はっはっは、この世の中フリースピーチ(言論の自由)なんてないね!!」

と冗談めかして言うものの、今は結構おとなしく自分がアラスカの僻地で電気もガスも来ていない土地に、自分で建てた小屋に住む計画についての別のYouTubeチャンネルを再開設していました。

彼を見ていて思うのですが、要するに「他人に指図されたくない」というか、「自分の人生は自分のものだと思っていたい」的なタイプの人がいるんですね。

彼のYouTubeチャンネル、売出し中なのでぜひ観てあげてほしいんですが(日本人の奥さんが適宜通訳してくれてますしアラスカの風景や飼ってる猫の映像だけでも楽しいです)、こないだまで日本に住んでいたんですが、わざわざアメリカの、しかも冬は酷寒のアラスカ(出身地というわけでもない)に再移住して、電気もガスも来ていない「オフグリッド」の土地に自力で小屋を建てて住むとか、普通に考えたら何でそんなモノ好きなことするの?って感じじゃないですか。

日本でも山奥の「ポツンと一軒家」を紹介する番組があるように、「普通の人」には理解できなくても、「人里離れて自分の好きに生きたい」という「隠者的欲求」が強い人というのは確かにいますよね。あなたもちょっとぐらいはそういう気分がわかる人かもしれない。

「僻地にオフグリッドキャビンを作って暮らしたい気持ち」と「自分に限った“隠者型反ワクチン派”」は同じような気分なのだと想像すると、それぐらい他人と分離して自分の道を生きたいという気持ちがあるなら、ワクチンだって嫌だと思うのも仕方ないかな、という感じがしてききませんか?

「アラスカに移住する」レベルでなくても、日常を都会で暮らしていても、こういう「隠者型精神の独立」を求めており、ワクチン接種したくない…という人は結構隠れているように思います。 考えてみれば、私たちが普段口にする食品に普通に使われているような、長い期間安全が確認され続けている添加物的なものですら、ものすごく神経質に「避けたい」と思う人は一定数いるのですから、ワクチンだってそう思う人がいるのは想像にかたくないですよね。

次ページ 5:「ワクチンパスポート優遇策」は「ちょっと嬉しいオトク」レベルに留めるべき

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