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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)
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  • 2021.07.19
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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)

5:「ワクチンパスポート優遇策」は「ちょっと嬉しいオトク」レベルに留めるべき

こういう「隠者型反ワクチン派」の人を「悪魔化」してしまわないことが、「社会全体の空気マネジメント」的には重要なことなんですね。

もちろんこれは、何らかの健康的な理由とか宗教的な理由とか、個人的にどうしても譲れない理由で打てないと思っている人たちのことも含みます。 なぜなら、このタイプの人は、他人がワクチンを接種することを真剣に止めたりはしないんですが、もし社会が「ワクチンを打たなければ社会生活ができない」レベルに締め付けていってしまうと、窮鼠猫を噛む的に「真剣な反対運動」に参加せざるを得なくなるからです。

「ワクチンパスポートがあれば社会全体の集団免疫達成よりも先に居酒屋で飲めます」という程度ならいいんですよ。

「そんなこと言われちゃったら打つしかねえよなあ」
「それが理由ならソッコーで打つんだね(笑)」

的な冗談に収まる範囲だからですね。

しかし、これが「ワクチンを打っていなければ生活が成り立たなくなる」レベルに締め付けると紛糾して、人権問題だという論争にもなるでしょう。

だからこそ、「ワクチンパスポート的な優遇」を接種率向上に使う時に、

「うまく差をつけて接種に誘導はするが、逃げ道は残しておく」

というラインで細部まで気を配っていくことが、結局はあらゆる人に無駄な強制感なく社会にとっての最善を目指す動きに持っていける塩梅になるはずです。

私はこういう「ちょうど良さ」のことを「ちょっと嬉しいオトク感」と呼んでいます。

その優遇を受けると「やったー!トクした!」と嬉しくなるレベルでありつつ、対象から外れた人が「なんで自分はその優遇が受けられないんだ!」と青筋立てて怒ったりするのはちょっとバカバカしい気持ちになる程度の特典をつける。これはいろんな商売の中で結構よくある重要な「ちょうど良さ」をいかに設定するかというテーマですよね。

「ワクチンパスポート優遇策」は今後の接種率向上において非常に「重要な武器」になるでしょうから、これを一般的な「人権問題」的に紛糾させて対策担当者の手足を縛ることはぜひとも避けたい。

だからこそ、今のSNSでありがちな「反ワクチンなんて全員バカだ」みたいな方向で盛り上がるのは避けて、「隠者型反ワクチン」の人を悪魔化しないことが重要なんですね。

そして、「気持ちはわからんでもない」的なつながりを維持しておき、

ワクチンパスポート優遇策は「ちょっと嬉しいオトク」的なことに使うのだという方針を明確にしていく

ことで、この「接種率向上のための大事な武器」を、「人権問題」的懸念から封印されてしまう流れにならないようにできればいいですね。

このあたりの「微妙なさじ加減」による「人権尊重と社会の運営の効率性の両立」みたいな問題については、「社会の中のマイノリティ的な性向の人とマジョリティとのあるべき“ちょうど良い”関係性」について、今の欧米社会でよくあるような「果てしなく糾弾」するタイプでない調和のあり方はどのようなものであるべきか? という観点から、人気バンド「バンプ・オブ・チキン」の曲たちを振り返りながら考えた記事が好評をいただいているので、ぜひそちらもお読みいただければと思います。

そろそろウェブ記事としては非常に長くなってきたので、「隠者型反ワクチン派」とは違う、「自分だけでなく他人にも反ワクチンを主張する」タイプの人、特にその「親玉」的な“活動家”の人たちにどう対処するべきかという大事な話は、次回記事でお届けすることにします

なんとか、あらゆる配慮を動員してワクチン接種を進めて、なんとかこのツライ「コロナ禍」を抜けて、集団免疫を達成した環境の中で思いっきりマスクなしで電車に乗ったり街を歩いたり、居酒屋やカラオケで飲んだり騒いだり、満員の球場で大声をあげてスポーツ観戦したり、狭いライブハウスで皆で歌ったり、しましょうね!

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