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コロナ後の経済再開の最善策は日本の製造現場が知っている【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(4)
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  • 2020.05.18
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コロナ後の経済再開の最善策は日本の製造現場が知っている【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(4)

3:ウィルスに対する学問知と、現場的人材との相互作用を!

たとえば、最近NHKのダイアモンド・プリンセス号での感染拡大を扱った番組で、ウィルスに見立てた蛍光塗料を使って、ビュッフェ形式の食事会でウィルスがどう広まるかを検証していました。

このように、明るい時には見えない蛍光塗料をウィルスに見立てて、人の手や食器を介してどのように広がっていくかを検証したんですね。

これ、何の工夫もしないでいると30分程度で参加者全員の手と多くの人の顔にウィルス(蛍光塗料)がつきましたが、

一方で、感染対策として店員が料理を取り分けてトングも頻繁に交換し、客にこまめに手を清潔にするよう促すと、塗料が付着した手の面積は30分の1に減り、顔に付着した人はいなかったということです。

…ということらしいです。

つまり、「ビュッフェ形式は危ない」と一緒くたにするとありとあらゆることを停止しなくちゃいけなくなりますが、「100回の中から1回の真実の瞬間を選び出して現地現物で検証する」ようにしていけば、R<1を実現するためのコストはバンバン下がってくるはずなわけです。

他にも、これは中国の研究ですが、飲食店における感染例で、エアコンの位置や席の配置でどういう人が感染したか、どういう人が感染していないか…を深く調べています。

こんな感じで、席の配置とエアコンの風の向きと、感染者の分布がめっちゃ詳細に出ている。

こういう「アカデミック」な世界における知見はこれからも沢山出てくるでしょうが、それが単に学問的専門家の間だけで滞留し、そこから突然物凄くわかりづらいPDF資料として「新しい生活様式」として大本営発表されるだけだと、実際には物凄く「大量に無駄なコスト」が発生するわけですよ。

「学問知」レベルの大雑把さだけで物事を見て、リスクがあるものを全部排除しようとしてしまうと社会的経済的コストが膨大になりますが、それを「現場知レベル」でさらに磨き込むことで、「真実の瞬間」を選び出してそれが起きづらくするローコストの工夫を無数に積んでいくことが大事なんですよね。

通勤電車だってパチンコだって、ちゃんと換気して接触感染に気をつけてマスクして距離をとってりゃリスクは低いはずです。

先日、みんな黙々と台に向かっていてお互い話しもしないパチンコでは感染リスクは低く、クラスター発生のエビデンスもないのに社会的攻撃対象にしてしまったことを日本医師会が謝罪していました。

自律的に経済回せるところは回してもらうことで、本当に直撃的なダメージを受ける業界をサポートできる余力も高まる。

リモートワークできる会社はそうすればいいけど、そういう会社が通勤を抑制してくれれば通勤が必要な会社が通勤する余地は生まれる。

昔、「エイズはキスでは伝染りません!」という啓発ムーブメントがあったかと思いますが、とにかく警戒されて色んな差別や偏見があった時代から、徐々にそうやって「真実の瞬間を選り分ける」作業が進んでいったわけですよね。

今は過剰にバッファーを取って「一切感染させないようにそもそも通勤しない、そもそも経済を回さない」になってしまっているものを、「真実の瞬間」を選り分けていくことで、「こういう工夫をすればリスクはかなり減らせる」という「品質を工程で作り込む」作業を積んでいくことが大事なんですね。

そうやって日本が誇る「インテリと現場人材の相互作用」の中で「新しい生活様式」をブラッシュアップしていけば、「R<1を実現するコスト」はどんどん下げていけるでしょう。

ここまで書いた話は、「日本のビジネスパーソン」なら、そんなに新奇なこと言ってないってことがわかりますよね?

普通に考える話だし、専門家委員会が孤立無援になってしまった中で強引に一律に経済を止めてしまったことを批判する中で、こういう方向性で考えるべきだ…というビジネス系の人の意見を沢山見ました。

他国と比べて「ゆるい」対策だった日本が欧米とは比較にならないレベルの感染に抑え込めているのも、都市まるごとロックダウンしたりするのではなく、「三密」といった「真実の瞬間」を選び取ってその可能性を減らすという「現地現物レベルでポイントを絞った」対策が功を奏していた可能性は高いと私は考えています。

今後、専門家会議と、日本の「仕事の優秀さ」を支える各種業界団体みたいな人たちが横断的に連携して、この「新しい生活様式」の徹底的なブラッシュアップを行っていけば、「R<1を最小コストで実現するモデル」を、他国が唖然とするレベルまで徹底的に磨き上げていくこともできるでしょう。

(次ページ:4:日本のスマホゲームの運営さんとプレイヤーのイメージで)

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