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左翼と右翼、フェミと反フェミ、時代遅れとイノベーション…「ほんのちょっとの工夫」で分断の時代は超えられるはず(後編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)
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  • 2020.04.17
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左翼と右翼、フェミと反フェミ、時代遅れとイノベーション…「ほんのちょっとの工夫」で分断の時代は超えられるはず(後編)【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(0)

「あたらしい意識高い系」に必要なのは「ほんのちょっとの工夫」

―― IT業界と製造業などの現場がうまく噛み合って力を発揮するためには、何が必要なのでしょうか?

倉本:単に「2つの世界」を無理やり一緒にしようとしてもダメで、「あたらしい意識高い系」には「お互いの違いを理解して、うまく組み合わせる」発想が重要です。そのためには「その2つの世界の境界」の部分で「ほんのちょっとの工夫」をちゃんとやることが大事なんですね。

過去20年のIT技術は発展途上だったので、末端の共同体をボコボコに崩壊させてしまって、人々を「他と切り離された孤立無援の個人」にしてしまいがちでしたよね。

でも例えば最近の日本の事例ではキャディ株式会社っていうところがあって、ここは全国にある板金加工業の工場の受発注プラットフォームを運営してるんです。これは業界の問題を最先端AI技術で解決しつつ、「現場レベル」の共同体の内部問題には踏み込まずに活かす構造になっているんですね。問題の切り分けが天才的なんです。

つまり、「ITに無理やり合わさせられる」のではなくて「現場的な組織の強みを活かすようにIT技術が寄り添ってくれる」発想になっている。社長さんは元マッキンゼーで最年少役員になった人で、技術トップは元AppleでAirpodsを作っていたエンジニアっていう「めっちゃピカピカのグローバル資本主義最先端」みたいな経歴の人たちが作った会社ですけど、それが凄く「日本の現場レベルの強みを持った共同体を崩壊させない、むしろ活かす」ビジネスをはじめているのは、過去20年とは全然違うところだと思います。

他にも、たとえばIoT(モノのインターネット)分野ではi Smart Technologies (iSTC)という会社があって、これは元トヨタのエンジニアが子会社のトップになってから製造業の現場をカイゼンするためのIoTソフトウェアを作っています。

ここの面白いところは、最先端の高価な機械を導入しないと使えないシステムにするんじゃなくて、たとえ“昭和“の時代から使ってる減価償却が終わった古い機械でも、秋葉原で買ってきたような100円とかの安い安いセンサーを取り付けて、ガシャコン!っていう機械の動き自体をセンシングして情報を取り込めば、それをカイゼンに活かせるデータとして扱えるようにしてるんですね。そして、その情報を見ながら現場の作業員が自主的に次々と工夫を載せていけるような仕組みになっている。

家電に例えると、新築で空調が一括管理されていて常に一定の湿度温度が保たれている住宅…って凄い一部の金持ちだけしか実現できない感じがしますよね?でも、安いセンサーをあちこちに取り付けて温度とかの情報を取って、加湿器とか空調へのリモコンとつないだら、あとはその間をソフトウェアでつなぐだけで、築40年で昭和の時代から使ってるような空調機器しかない家でも同じことが実現できますよね。

「インテリの世界」と「現場の世界」の境界領域において、そういうクリエイティブな「ほんのちょっとの工夫」があれば、「一部の特殊なインテリ以外徹底的に排除されている」形の経済にはない可能性が生まれてくるんですよ。

「重さのない世界」から「重さのある世界」にIT技術の応用が進んでいく中で、「一部のインテリだけがすべてを差配する世界」から、日本ならではの「インテリの人と現場レベルの人」がちゃんとお互いの良さを活かせる世界が見えてきているんですね。

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